僕は勇気を出して、好きな人に告白することに決めた。橋の上で待ち合わせをしていると・・・。
告白
僕は今日、恋をしたある女性に告白をする。
橋の上で待ち合わせをしながら、色んな事を考えていた。
まず最初は、笑顔で挨拶から始めてみよう。そうしないと多分、怖がられる。告白するのに怖がらせては意味がない。せっかく、あんなに可愛くて優しい人を見つけられたのだから、感謝して今を生きたいものだ。未完成な僕にとって、今日は人生で一番の正念場だ。
もう二度と、こんなに好きなった人には巡り会えないとは思わないけれど、少しばかり、こんな気分に浸るのも悪くない。
彼女は振り向いてくれるだろうか?
気持ちを告白して嫌われないだろうか?
嫌われることはないにしろ気まずくなり、話しづらくならないだろうか?
他に好きな人がいるので……と言われないだろうか?
僕の頭の中で後ろ向きの考えがグルグルと駆け巡る。考えては、ため息をつき、また考えては、ため息をつくの繰り返し。しばらく違う事を考えようとするけれど、やっぱり考えてしまう。
心のどこかが熱くて、少しだけ息苦しい。無意識に呼吸はするけれど、常に意識をしている感じ。こんな状態では、うまくいくものもいかない感じがする……。
明日にしようかな?
無理だ、あと三十分くらいで来る。
どんな言葉で告白しよう?
ストレートに『好きです。付き合って下さい』かな?
それとも、何か意外性がある告白にしようかな?
どんな告白だ?
失敗したくないからな……。
よし、ストレートに告白しよう!
一気に緊張してきた。冷たい汗が額からこぼれた。
橋の真ん中で待っていると向こうの方から、彼女らしき姿が見える。僕は思わず、ここから飛び降りたい気持ちになった。告白は恥ずかしいけれど伝えたい。
彼女と、もう二度と話せなくなっても永遠の別れになったとしても、やっぱりこの気持ちは知ってもらいたい。なぜか涙がでてきた。悲しくもないし、嬉しくもないけれど涙がこぼれ落ちた。
彼女が目の前に来た。
「どうして泣いているの?」
彼女は不思議そうに尋ねた。
「君が好きです……」
「……………」
僕がそう告白すると、彼女は無言のままカバンの中から、ゆっくりと包丁を取り出した。その包丁には、真新しい血がびっしりと付いている。
「私の事が好きなら、これを持って警察に行ってくれない?」
彼女が何を言っているのか、何をしているのか理解できずに、呆然と立ち尽くす僕は、彼女に色々と聞きたかったが口から出る言葉をすぐには見つけられなかった。
「ねえ、聞いているの?」
動揺して何も言わない僕に、彼女はその包丁で僕のお腹を勢いよく刺した。
僕は、ゆっくりと目を開けて、深く息を吸って吐き出した。時間の感覚がなくなった僕は、橋の上でずっとこんな妄想をしている。今で何回目だろう……。
約束した時間に彼女はまだ来ない。そして、また涙がこぼれ落ちた。