三人の男に囲まれ、手も足もでない絶体絶命の緊迫した中で一人の男が最後に見たものは・・・。
快感と後悔
初めて女の身体に吸い込まれた時のような、それは何とも言えない心地よい衝撃だった。
気分がハイになり、もう怖いものなどない。何でもできる。そう思えるぐらい……。
でも、時間が経つにつれてボロボロになった。精神は崩壊寸前、手の汗が止まらず、鼓動が速く、息苦しい。あの白い誘惑を見せられたとき、俺の中の欲望をどうしても止められなかった。
人間って本当に弱い生き物。本当にそんなものに頼らなくてはならなかったのか?
今更ながら、自分の愚かさに泣けてくる。もう後戻りできない。今の状況を受け入れて進むしかないのか?
お金も底をつきかけ、俺は無謀としかいいようがない、とんでもない事をしてしまった。
今、目の前にはギラギラとした瞳を持った三人の男に囲まれている。
とうとう捕まってしまった……。
「取るつもりはなかったんだ」
そんな事を言った所で何も変わらない。
三人の男は無言のまま獲物を仕留めるハンターの様に、こちらを見て狙いをさだめている。さっきから手の震えが止まらない。頭がおかしくなりそうだ……。
「あと一つだけでいいんだ。頼む……」
そんな事を嘆いても、受け入れてくれるはずがない。一人の男が悲しい顔をして、こう言った。
「俺達もできればこんな事はしたくたい。でも、しかたがないんだ。これが俺達のやり方だからな」
結局俺はこんなものだったのか……。あの白い誘惑に手を出したばっかりに……。
なぜ、あの時に辞められなかったのだ?
誘惑に負けなければ違う道があったかも知れないのに……。
人間の欲望にはキリがない。
どんどんとエスカレートしていく。
もっと、もっと、もっと……俺という奴は……。
昔からそうだった。他人のものは、良く見える、美味しく見える、自分の持っているものと、たいして変わらないのに。隣の芝生は青い、他人の芝生を見た所でそれは他人のもので自分のものにはならない。
「これで終わりだ……」
もう一人の男が残念そうに言った。
俺は最後のわずかな望みを、全身全霊に賭け静かに目を閉じた。
銃口から発せられた音が鳴り響いた感じがした。
次の瞬間、俺の呼吸は止まった。
ゆっくりと静かな時が流れていく。
張りつめた空気が少しずつ消えていく。
―ドクンッドクンッ
何の音だ?
心臓の音?
俺はまだ死んでいない……。
最後の言葉を三人の男に、俺は震える声でこう言った。
「ツモ……大三元・字一色・ダブル役満。俺の逆転勝ちだな」